Total chemical synthesis of homogenous glycoprotein for elucidation of UGGT recognition and GQC process
[要約]
このページでは、小胞体内の糖タンパク質品質管理機構のプロセスをより実質的な大型糖タンパク質で調べてことについて述べる。
UGGT_EPO
正しく折りたたまれた形とミスフォールドした形の両方で化学合成された均質な糖タンパク質を用いて、UGGTの認識パターンと糖タンパク質の品質管理システムの詳細を系統的に調べた。2018年、梶原らのグループは、エリスロポエチン(EPO)をモデルに、正しく折りたたまれた糖タンパク質とミスフォールド型の糖タンパク質の両方でそれぞれ4つのグリコフォームを合成した[34]。化学合成は、糖ペプチド、およびペプチドをSPPSによって調製後、次いでNCLを繰り返しおこない、Asn24、38、83に3つのM9高マンノース型糖鎖を持つ完全長EPOを得た。そして、得られた全長糖ペプチドは、透析と酸化還元条件下でのin vitroフォールディングにより、正しくフォールディングされたEPO 110とミスフォールディング体となったEPO 110の両方が得られた。それらを逆相クロマトグラフィーで精製し、それぞれ単一構造のEPOを得た。そしてそれらをUGGTがどのように認識するか調べた (図13、右上)。意外なことに、これらのEPO誘導体はすべてUGGTに認識され、G1M9グルコシル化体112を与えた。このデータは、UGGTがタンパク質の3次構造より、疎水性をタンパク質表面に提示しているものを認識することを示している。すなわち、ミスフォールドの場合は、疎水性アミノ酸がタンパク質表面にでてくるので、それをUGGTがミスフォールドと判断していると思われる。その結果、正しくフォールドしたEPOでもその表面に疎水性面が多いので、UGGTはミスフォールドと認識し、グルコシル化したものと判断できた。
糖タンパク質の品質管理(GQC)システムにおいて、ミスフォールディングした糖タンパク質のリフォールディングがどのように進行するかを追跡する実験をおこなった。ミスフォールディングした合成糖タンパク質EPO 110とIL-8 111を、GQC酵素とシャペロンをすべて含む分離小胞体溶解液にいれ、 (図13、右下)そのフォールディング様式をLCMSで追跡した。これらのアッセイから、GQC過程ではタンパク質がリフォールディングしているにも拘らず、グルコシル化が観測されなかった。そこで、グルコシダーゼ阻害剤を加えたところグルコシル化が起こっていることが確認できた。これは、高速のグルコシル化/脱グルコシル化過程が存在し、フォールディング中間体であるG1M9-ミスフォールディング糖タンパク質は効率的にネイティブなM9 IL-8 113に変換されているということが確認された。この研究により、合成した均一なミスフォールディング糖タンパク質が、GQC過程を詳細に調べるための強力なツールとして利用できることが示された[34]。